加工食品で固結の起こる原因と防止方法

加工食品で固結の起こる原因と防止方法

造粒品を扱う上で注意したいのが、吸湿による固結です。
例えば、果糖を使った 粉末のジュースを作ったとしましょう。
果糖は吸湿しやすい素材のため、水分を吸ってしまい粉末が固結し商品性を失うことが十分考えられます。

固結とは?

固結とは、食品が吸湿し粉末粒子同士がくっつくことで塊になることを指します。
塩の固結が発生するメカニズムを考えましょう。

塩は外気の湿度の変化に応じて吸湿したり乾燥したりする。吸湿したときは表面に飽和塩水の液膜ができ、乾燥すると液膜が固体化して塩の粒を接着する
塩_固結

(引用:塩の情報室
つまり、固結が起こるのは塩の表面が吸湿して溶けたり、乾燥して結晶が成長したりする工程を何回も繰り返しますことで大きな塊に成長します。
水溶性の素材であれば、固結が起こってしまうといえるでしょう。
また、吸湿が激しい場合は固結せずに、溶けてしまいます(潮解と呼ばれます)。

固結の防止方法

固結の防止方法は、主に4種類の方法があります。
▶︎固結対策1
吸湿の防止方法と同じく「包装で外気と遮断すること」「乾燥を十分行い、水分活性を低くする」ことが挙げられます。

▶︎固結対策2
「固結防止剤を使用する方法」もあります。
固結には、二酸化ケイ素・リン酸カルシウムなどが知られています。

▶︎固結対策3
粒子間の接触を防ぐために、不溶性の物質(タンパク、デンプン、無機塩)を混合します。
不溶性の物質が多いほど、結晶が成長するのを阻害できます。

▶︎固結対策4
造粒することで、粒子の表面積を小さくします。
表面積が減ることで、粒子と水分の接触する機会が減ります。
混合品で吸湿する場合、造粒することで 水分活性が下がる+表面積が下がる恩恵を受けて、問題が解決することが多いです。

参考
食品開発の進め方

水分による食感の変化:吸湿と乾燥

水分による食感の変化:吸湿と乾燥

乾燥食品(顆粒タイプのサプリメント,シリアル,煎餅など)において問題になりやすいのが、吸湿による 食感の変化です。

日本は多湿の環境ですので、吸湿による劣化を考慮した商品設計を行わなければなりません。

食品の吸湿の状態を理解するには、水分等温吸着線を見るのが大切です。
あらゆる食品の吸湿は、下記のS字カーブを描くことが知られています。

スクリーンショット 2015-12-06 20.02.52
(改変:山口大学工学部:食品乾燥における塩の添加の乾燥速度と乾燥表面の評価
縦軸:吸湿速度
横軸:水分活性(Aw)
(水分活性については、微生物と水分活性:結合水と自由水を参考ください)
で食品の吸湿状況を表しています。
十分乾燥を行った結合水のみの場合は、吸湿は非常にゆっくり進みます。
一方、水分活性が高くなると 吸湿速度が加速的に早くなるという特徴があります。

そのため、吸湿を防ぐには最初に水分量を低くすることが大切になってきます。

また、吸湿速度は温度が高くなればなるほど、早くなることも知られています。
スクリーンショット 2015-12-06 23.38.56
(引用:山口大学工学部:食品乾燥における塩の添加の乾燥速度と乾燥表面の評価

水分活性が高くなると、劣化が早くなる

吸湿をし水分活性が高くなると、粉体がべとべとになったり塊になってしまうので 食品の風味が損なわれます。
それ以外にも、水分活性Awが高くなると 微生物の繁殖・吸湿による酸化・褐変反応の促進など様々なデメリットがあります。

吸湿の防止方法

吸湿の防止には、包装で外気と遮断することが通常です。
吸湿しやすい原料を含む場合は、乾燥剤を入れることも多いです。

食品で使用する天然系着色料の色素変化と注意点

食品で使用する天然系着色料の色素変化と注意点

食品の品質において、重要な指標として挙げられるのが色です。
食品に含まれる色素成分は不安定な成分であり、酸味料との組み合わせで発色が変わったり 鉄を入れると黒く濁るなど 様々なトラブルに繋がりかねません。
加工食品で使用される色素は安定性の高いものが多いですが、組み合わせに注意が必要なんです!

食品に含まれる天然色素の特徴を見ていきましょう。
色素には、合成色素・天然色素がありますが 健康食品ではもっぱら 天然系が使用されます。

ポルフィリン系色素

クロロフィル色素

スピルリナ
クロロフィル色素は、葉緑素色素として知られています。
代表的な色素はスピルリナが有名です。

熱・金属イオン(栄養強化でミネラル類を添加しやすい)に比較的安定な一方、光や酸性に弱いです。
特に、酸性化では 褐色反応が進むので注意が必要です。

詳細はこちら:健康食品開発のためのクロロフィルの退色《原理と対策》

▶︎クロロフィルの変化
クロロフィル_変化

ヘム色素

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ヘム色素とは、動物性食品に含まれる鉄分を含んだ赤色の色素です。
ヘム色素は、酸化することで鮮やかな赤色から褐色に変化することが知られています。

健康食品では使用することがほとんどないと思います。
ハムの加工では、色味をよくするために 発色剤として「硝酸塩」を使用します。
そうすることで、食肉製品に鮮やかなピンク色をつけています。
(正確なところは、食品添加物<発色剤>に詳しい)

カロテノイド系色素

カロテノイド系色素

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(引用:わかさ生活:カロテノイド
カロテノイド系色素は、赤〜黄色が特徴です。
カロテノイド色素は、 アナトー・パプリカ・クチナシ黄色素・アスタキサンチン・ルテイン など様々な食品から抽出され色素として利用されます。
注意点は、光に対しての不安定な点です。
また、酸素と反応し分解されてしまう性質を持っている。
そのため、包装使用をしっかり考える or 他の同じ色味を呈する色素を検討する必要があります。

フラボノイド系色素

フラボノイド系には、アントシアニン系とフラボン系の2種類あります。

アントシアニン系

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(引用:花の色はいろいろ
アントシアニン色素は、果実や花などから抽出される 赤・青・紫が特徴の色素です。
赤キャベツ・アカダイコン・紫トウモロコシなどから抽出されます。

phにより、色味の発色が異なります
酸性では赤、アルカリでは青になります。
食品で注意が必要なのは、酸味料を使用する時です。
着色料の検討をする時は、pHを固定してから行う必要があります。

▶︎アントシアニンの変化
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フラボン系

イソフラボン
フラボン系は、無色〜薄黄色が特徴です。
色素として使用することはないのですが、鉄などの金属反応し 色が変色(黒く濁る)することが知られています。
健康食品では、イソフラボンやカテキンなどが有名なフラボノイドです。
これらと一緒に鉄などを添加する時は、コーティングされた鉄を使いましょう。

▶︎フラボンの色素の変化
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その他の色素

クルクミン

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クルクミンはウコンに含まれる黄色の着色料です。
着色料としてよりも、機能性素材として配合されることが多いです。
光に弱いので、注意が必要。

キノン系色素

赤色の色素として、ラッカイン酸(ラッカイガラムシの分泌する色素)。
これは、錠剤のコーティング(セラック)として使用されることが多い。

コチニール色素は、エンジ虫から抽出される赤色の色素です。
コチニール色素を含む飲料で急性アレルギー反応(アナフィラキシー)を起きたことがあり、健康食品では使用されることはほとんどありません。
熱に安定なので、練り物・菓子類に使用されます。

まとめ

天然色素をざっと、見てみました。
色素はまだまだ種類がありますが、普段利用することの多い 原料の特徴を簡単に解説しました。

色素と聞くと、安定しているイメージがあるものの 条件次第では 色味が変化してしまう色素が多いです。
着色料=万能ではなく条件次第では色が変化するということが理解していただければ と思います。

参考
引用及び色素変化の写真の引用調理科学実験B,C(6回目)

健康食品開発のためのクロロフィルの退色《原理と対策》

健康食品開発のためのクロロフィルの退色《原理と対策》

クロロフィル(葉緑素)の退色も加工食品の外観の劣化でよく出会う問題です。

クロロフィルは、植物細胞内では タンパク質と結びついているため安定している。
しかし、酸性化では 緑色のクロロフィル褐色のフェオフィチンに変化します。

クロロフィルを含むほうれん草を様々なpHの溶液と混ぜる場合、塩酸と混ぜた時最も茶変をします。
クロロフィル_変化
(引用元:食品学実験1/管3/天然色素に関する実験1

青汁や野菜ジュースなどのクロロフィルを多く含む原料を配合する際に、酸味料を入れる時は 緑色の色素を加えることで劣化を誤魔化すことができます。
ビタミンの強化目的で、ビタミンCを配合すると茶変の原因になるため注意が必要であります。

また、クロロフィルの分解は酸素・光・水分・温度など影響を受けます。
できるだけ、クロロフィルの分解を遅くするには、遮光・密封できる包装形態を選択する必要があります。

また、原料の加工時にブランチング(湯通し)を行い、酵素を失活させることで色味の劣化を抑えることができます。

まとめ

クロロフィルは、緑が茶になるため 賞味期限が短くなりがちです。
クロロフィルが入っているのは、緑色の天然原料(ほうれん草・パセリ・セロリ・大麦若葉などの野菜がメイン)。

特に注意点は、pHです。
酸味料を入れていないから大丈夫と思いきや、VCやレモンなどの原料が溶液を弱酸性にし 外観の変化を早めていたということが多いです。

健康食品開発のためのメイラード反応《原理と対策》

健康食品開発のためのメイラード反応《原理と対策》

アミノ酸
メイラード反応は、アミノ酸と糖が反応して 褐変する現象です。
加工食品の色味の変化は、メイラード反応であることが多いです。 加工食品の賞味期限設定では、味の変化よりも外観の変化の方が影響が大きいため、メイラード反応による褐変は深刻な問題です。
同様の反応に、ビタミンCがアミノ酸・タンパク質などと結びついてメイラード反応のような褐変化を起こすことも知られています。

健康食品ではビタミンCを配合することが多いので注意が必要です。
特に美容系のサプリメントだと、V.Cとコラーゲン(タンパク質)、V.Cと必須アミノ酸といった 技術者には嬉しくない組み合わせが多い。

メイラード反応を防止するのは難しいので、反応速度を遅くする or 着色して誤魔化すのが一般的です。

メイラード反応の反応速度に関わる因子

アミノ酸

アミノ酸の種類により、褐変のしやすさが異なります。
(グリシン及び塩基性アミノ酸が反応しやすい)
ただ、健康食品の場合 アミノ酸は訴求成分として使用するため変更が難しい。
そのため、他の因子で反応を遅らせることを目指しましょう。

メイラード反応では、糖の還元末端基 と アミノ酸の2つが反応に関わるため 直接還元糖を多く含む グルコース(ブドウ糖)・フラクトース(果糖)・乳糖・デキストリンが注意が必要な原料に当たります。

健康食品では、増量剤として デキストリンを使用することが多い かつ 糖のイメージがないので メイラードの原因だと気付きにくいため注意が必要です。

pH

pHが高いほど褐変が早いことが知られています。

水分

顆粒の健康食品では、水分が高いほど褐変しやすいためできるだけ水分を下げることが求められる。
一方、グルコース(ブドウ糖)・フラクトース(果糖)が水分を保ちやすく 乾燥しにくい。

水分を下げるのは、簡単なようで難しい。

温度

温度が高ければ高いほど、反応速度が早い
賞味期限の設定の時、高温槽で加速して 褐変がひどい場合でも常温で長期間保管したものを観察すると全然変化していないことも多い。

加速試験の際、褐変の原因がメイラード反応ならば 過去の常温の安定性試験を見返し 試験の計画を練りなおそう。

まとめ

加工食品の外観の変化は、メイラード反応以外にも、ポリフェノールによる、酸化酵素反応が有名です。

参考
食品開発の進め方

健康食品開発のための酵素による劣化《原理と対策》

健康食品開発のための酵素による劣化《原理と対策》

健康食品は、加工度の高い原料を扱う事が多いので 酵素を熱処理などで不活性にしていることが多いです。
そのため、問題となることは多くありませんでした。
しかし、ここ最近 酵素ゼリーや酵素入りスムージーなど 酵素を売りにした製品が増えました。
そういった環境を踏まえると、酵素について知識を持つことが大切です。

酵素とは?

 酵素
酵素とは生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子を指し、タンパク質からなります。

タンパク質を分解する、プロテアーゼ。
炭水化物を分解する、アミラーゼ

などの酵素は有名ですね。
酵素反応の代表例は、野菜です。
野菜を未加熱の状態で、加工食品に添加すると保存中に酸化反応し異臭を発生します。
そのため、加工食品に利用される野菜粉末はブランチング処理を行います。

食品と酵素の反応には、主に2種類あります。
それは、「加水分解酵素」と「酸化酵素」です。

加水分解酵素

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加水分解酵素とは、タンパク質を分解する「プロテアーゼ」、炭水化物を分解する「アミラーゼ」などによる反応を指します。
でんぷんの含まれる、加工食品に「アミラーゼ」などが含まれている場合 でんぷんが分解されてしまい 食感が変わることがあります。

余談ですが最近流行りの酵素は、こちら側の「加水分解酵素」を指します。
(いわゆる、消化酵素・代謝酵素など)

粒子が移動できない形態(顆粒・錠剤など)では加水分解酵素の働きがほとんど見られませんが、粒子の移動が自由な液もの(ドリンク・ゼリーなど)では酵素を配合すると 加水分解が問題になり 安定性が悪い方向に向かいやすいです。

酸化酵素

りんご
褐変反応の多くは、フェノール類の酸化重合反応です。
りんごを切ると、断面が黒くなります。
それは、りんごに含まれるポリフェノールと空気が酸化反応を起こしているからです。
酸化のデメリットは、外観の変化以外にもビタミン・アミノ酸の分解も伴うため、栄養の低下も招きます。

ポリフェノール類の多くは、脂肪減少効果が認められていることが多くサプリメントに使用することが多いです。
ポリフェノールを含む原料を扱う場合は、安定性に注意しましょう。

食品中の酵素反応の対策

酵素反応は、温度・pHに依存するため、pH(4以下)調整、低温にすることが望ましいです。
その他に、原料加工工程における酸素の除去、アスコルビン酸などの酸化防止剤で反応を遅らせることが挙げられます。

参考
食品工業技術概説

食品開発の進め方

健康食品開発のためのでんぷんの老化《原理と対策》

食品の劣化:でんぷんの老化

健康食品だと、でんぷんをメインに使用した商品は少なく問題になることは少ないです。
しかし、食品を扱う上では非常に重要な現象なので、理解しておきましょう。
私たちの身の回りにある、「澱粉の老化」は ご飯の保存にあります。
炊いたご飯を保存するには、冷蔵ではなく冷凍します。
その理由は、米の老化は2〜4度でもっとも進みやすいです。
一方、-20℃付近まで冷やすと一気に冷やすと老化しにくくなるので、レンジで解凍しても美味しくたべれますね。

でんぷんの老化が問題となる商品は、

①冷凍食品
ビュッフェパンケーキ(38g×8枚)×5組 冷凍

→冷凍麺などは、でんぷんの塊。
冷凍のパンケーキなどもでんぷんの老化が気になる製品です。

②中華のたれやホワイトソース
ハインツ ホワイトソース290g×4缶
→とろみは、小麦粉などでつけられる。

上記の加工食品では、でんぷんに処理を加えた 加工澱粉を使用したり、糖類・乳化剤を添加することで老化を抑えている。
具体的に、澱粉の老化の原因と対策を見ていきましょう。

澱粉の老化 とは?

でんぷんの老化
(引用元:なぜ麺はのびるとまずいのか?~即席麺の作り方と「マルちゃん正麺」がおいしい理由~
澱粉の老化とは 食感がぼそぼそとする感じです。
現象で見てみると、次のようになります。
①澱粉は水を加えて加熱すると、ある温度以上で水を吸収して膨張する(アルファ化)
②低温で保管することで、徐々に澱粉分子同士がくっつき、水が排出されます(老化)

澱粉の隙間にあった、水がなくなることで弾力がなくなり 乾燥状態に近づきます。

要素別に見る、澱粉の老化

澱粉の性質を踏まえて、商品設計をしたい。

pH

pH 5~7で老化速度が速いことが知られている。
弱酸性の方が、水素結合を形成しやすくなり、澱粉分子同士が結合するからである、
(参考:澱 粉 と シ ョ糖 脂 肪 酸 エ ス テ ル の 相 互 作 用 に 関 す る 研 究

温度

澱粉の老化は2〜4度でもっとも進みやすい。
冷蔵保管で保管する製品を設計する上では、澱粉の老化は非常に厄介である。

温度による、劣化を避けるために 急速冷凍という技術があります。
冷凍麺は、30分以内に、中心温度を-1-5度未満にしています。

水分

水分が多いほど、澱粉の老化がしやすいことが知られています。
水分10〜15%以下の低水分食品(ビスケット等)は 水分が自由に動ける状態でないので、老化が進行しにくいです。

薬を飲むのに使用される、オブラートなども 水分が低いので澱粉の老化を防いだ技術の一つです。

澱粉の種類:アミロースとアミロペクチン

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(引用元:和菓子技術者になるための必須知識)
でんぷんはブドウ糖がつながってできた炭水化物です。つながり方により、1直線につながったアミロースと、枝分かれ したアミロペクチンの2種類に分けられます。
アミロースは1直線なので、水を離しやすいので老化しやすいです。

アミロース含有量の低い澱粉を選択することで、老化を防ぎやすくなります。

老化を防ぐことのできる物質

▶︎糖質
トレハロースは、糖の中ででん粉老化抑制効果が大きいことが知られています。

10℃、16時間保存後の状態した、もちの様子は以下である。
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(引用:林原:トレハロース 澱粉老化抑制

▶︎乳化剤
乳化剤はデンプンを構成するアミロースやアミロペクチンと複合体を作り、再結晶化(老化)を防止します。

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(引用:太陽化学:【第5回】乳化剤の使用方法

▶︎タンパク質
不凍タンパク質とよばれるタンパク質は、氷結晶の成長を妨げるため 澱粉が傷つくのを防ぎます。

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(引用:カネカ:不凍タンパク質

▶︎増粘剤
増粘剤を添加することで、離水を抑え 老化を防止する作用があります。
スクリーンショット 2015-11-18 23.31.24
参考:タマリンドガム:DSP五協

参考
食品開発の進め方