賞味期限の設定・推定方法:T.T.T.法

賞味期限の設定・推定方法:T.T.T.法

加工食品の賞味期限は、一年・二年などとても長い期間が設定されます。
理想的には、2年経過品でも品質劣化が問題ないことを確認した後、商品を販売すれば良いのですが 現実だとそんな期間の余裕はありません。
そのため、加速(促進)試験を行い 賞味期限を推定することが多いです。
推定方法は、T.T.T.法と呼ばれています。

食品会社に従事する人ならば、すでに利用したことがあるかもしれませんが設定根拠について改めて見てみましょう。

T.T.T.法とは?

T.T.Tとは、Time.Temperature.Tolerance(貯蔵時間-温度-耐性)の略語です。
実際の流通温度よりも高い温度帯に晒すことで、化学変化が促進され 賞味期限を推定することができます。

賞味期限と温度の関係は、以下のアレニウス式が知られています。
変数は、T(温度)賞味期限(k)の2つです。
そのため、ある2点の温度での変化速度がわかれば、直線の傾きを推定することができます。
傾きがわかれば、あらゆる温度での賞味期限(k)が推定できるようになります。

▶︎T.T.T.法の根拠となる、アレニウス式
T.T.T.法
(引用元:農学国際特論 Ⅰ:ポストハーベスト、保存・流通(東京大学講座)より

実際の保存試験を想定してみよう

①基準温度の設定

基準温度とは、製品の賞味期限(k)の根拠となる温度です。
加速試験を行った後、アレニウス式を完成させた後 代入する温度Tです。

基準温度は、商品の保存状態を考慮した温度を選びましょう。
沖縄那覇市の平均気温や東京の平均気温を選ぶことが多いです。

②加速試験の温度設定

基準温度+10度、基準温度+20度にて、加速試験を実施します。

温度が高くなるにつれて、劣化が大きくなります。

③変化の評価

加速したサンプルを定期的に評価する必要があります。
加速時間は、1週間、1ヶ月など定期的に実施する必要があります。

変化の評価項目は、色・味・歯ごたえなど官能評価で評価することが多いです。
評価は数値ですることが必要で、以下のような感じが一般的である。

5 点:対照品と比較してほとんど差がない
4 点:対照品と比較してわずかに劣る
3 点:対照品と比較して劣るが,商品として必要な品質が保たれている
2 点:対照品と比較してかなり劣る
1 点:対照品と比較して非常に劣る

1点が変化の限界点であり、商品性をそこなうのはどのラインであるかを、明確にする必要があります。

④変化の推定

基準温度+10度、基準温度+20度で各々、保存可能期間を推定しましょう。

基準温度+10度,基準温度+20度において、官能評価で色の変化を評価したとしましょう。
基準温度+10度において、1ヶ月ごとに官能評価を行い 色差を判定します。
基準温度+10度で12ヶ月で品質の限界になり、基準温度+20度だと3ヶ月で品質の限界に達しました場合を考えましょう。
グラフにプロットすると以下の感じです。

もし仮に、品質の限界まで十分加速する時間がない場合は、何点かサンプルを判定を行いグラフをプロットすることで、品質の限界点を推定します。
TTT_変化量
次に、各温度における限界点をプロットして、アレニウス式を完成させましょう。

実際に2点を線で結ぶと下記のようになります。
TTT_アレニウス式
このグラフを利用すれば、あらゆる温度での賞味期限を求めることができるようになりました。

基準温度で、賞味期限がどれくらいになるか確認しましょう。

実際の実務ではもう少し簡便化をするために、実際に流通温度で 定期的にデータを集めている実績のある商品と同時に加速し、劣化の変化が同等程度なら 同じ賞味期限を設定することもあります。

賞味期限の設定方法については、会社の方針による部分があります。

まとめ

賞味期限を設定するには、以下の①〜③を実施する必要はあります。

①加速試験にて、不適切と判断される2点を探します
②2点間で直線を引き、アレニウス式を完成させます
③基準温度での、臭味期限を推定します。

①〜③での精度をあげるためにも、標準品を設定したり、評価項目の見直しなどが大切です。

加工食品の賞味期限で満たすべき3つの品質

加工食品で賞味期限を設定する3つの根拠

賞味期限を設定した期間内は、メーカーは3つの品質を消費者に約束する必要があります。
その3つの約束とは、

「成分が劣化しない!(理化学項目)」

「菌が繁殖しない!(微生物項目)」

「食べて美味しい(官能項目)」

です。

商品設計に関わる人は企画の良さ、体感性といった部分に目を向けがちですが、「賞味期限が長い程、流通業者にとっては在庫リスクが少なくなる」といった点も商品性において非常に重要な項目です。

賞味期限の定義は、加工食品品質表示基準で決まっています。
どんな風に定められているか、賞味期限の定義を抜粋してみます。

定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。

具体的に実務に落とし込んだ場合だと以下の様に解釈できます。

「定められた方法により保存した場合」とは、製品が流通する条件をさします。
例えばペットボトルの飲料であれば、ペットボトルに入った条件 かつ 保存条件を満たした状態で 賞味期限を設定するための安定性試験を計画する必要があります。

また、賞味期限内に期待されるすべての品質が保持する必要が有ります。
品質とは、「理化学試験」「微生物試験」「官能試験」が主な評価項目です。
これら3つの品質を確認するために行う試験を見てみましょう。

①理化学試験

理化学試験
理化学的な項目とは、分析機器を使用して測定する項目です。
品質の劣化の原因になる物質や栄養素を計測することで、食品の劣化を調べます。

食品で分析することの多い項目を列挙すると
ビタミン,水分,水分活性,pH,酸価(AV),過酸化物価(POV),チオバルビツール酸価(TBA価),揮発性塩基窒素(VBN),酸度,糖度,ヒスタミン,硬さ等の物性 等
があります。

どの項目を分析するかは、食品に配合されている原料や剤型に依存します。
油脂が多く含まれる食品は、過酸化物価(POV)を測定しますし、錠剤であれば 硬度の測定を行います。

②微生物試験

微生物試験
食品が微生物の培地となり、異臭がしたり酸味が発生する状態です。
健康食品だと、水分値が低かったり 殺菌工程を挟む 製品が多く問題にすることが少ないでしょう。
多くは、「一般生菌」及び「大腸菌(群)」を考慮するのが多いです。

一番みじかな微生物が問題になる例だと、スーパーのお惣菜があります。
常温で一週間も放置すると、異臭がしますよね。
それは、微生物がタンパク質を分解してアンモニア・メタンなどを生成したからです。

賞味期限を設定する場合は、微生物の増殖を抑える事を考慮しないといけません。
新規性の高い原料を配合する場合や、新規性の高い製法にチャレンジする場合にハードルになることが多いです。

③官能試験

官能試験
食品に異常がないかどうかは、人が実際に食べて評価を行います。
食品は人が摂取するものであるため、人が評価することで正確な判断が行えます。

官能試験は、食品の外観・色・香り・味などを評価します。
多くは社内数名で、数値(0〜10)で評価します。
(0:変化なし 5:変化あるが許容内 10:賞味期限外 というふうに数値で評価します。)

12ヶ月の賞味期限設定をする場合、3,6,9,12,15,18ヶ月くらいで評価を行い劣化具合を数値で評価する事で劣化の傾向を評価します。
また、賞味期限の劣化は温度に依存するため、40度・50度など高温の加速試験を行い 短期間で賞味期限を行うことが多いです。

参考
賞味期限等設定のための試験

食品開発の進め方